建築データ
所 在 地 山口県 田布施町
主要用途 専用住宅
構 造 三原建築設計事務所
構造・構法 木造(在来工法)
規 模 階数 地上2階
建築面積 63㎡
延床面積 88㎡
撮 影 益永研司写真事務所 益永研司
設計趣旨
計画地は山口県の南東部に位置する田布施町という町の住宅地にある。敷地は母屋のすぐそばにあり、細長い形状が特徴的であった。計画地を訪れると、この地域の肥沃な土地から生まれる植物の力強さが強く感じられた。都会とは違い、ここは自然と人間が程よく協力し合っているように思えた。そんな自然が発する豊かなエネルギーが住居内を通り抜け、常に新鮮なエネルギーに満ち溢れた空間にできないかを設計のテーマとすることにした。
そこでこの細長い敷地に木の板を挿入し、その挟まれた空間で住空間をつくり外のエネルギーが次々と木の板を伝って押し寄せてくるような空間を目指した。また居室には内部外部にランマを設け、人の意識がおのずと外の世界へむかう計画とし、意識の循環を促した。
建主は他にも日当たりの良い敷地があったが、子供のときに何か嫌なことや不安な時に祖父の布団で一緒に寝ていたことがとても大切な時間だったと気付き、自分の子供にもそのような思い出を育んで欲しいと実家のすぐそばのこの敷地を選んだ。そんな建主と打合せを重ねるごとにこの場所でしか味わえない幸せを存分に享受できる空間にするんだという強い気持が生まれた。河合隼雄は人の幸せの感じ方として次の2点の共通点をあげている。①将来に対して希望がもてる。②自分を超える存在とつながっている、あるいは支えられていると感じることができる。①に関しては社会と大きく関係しているが、②に関してはそのようなアンテナを広げられる場所があるかどうかが大きく関係していると思っている。
子供たちも慣れたものでバッタやカエル、カマキリといった生き物を捕まえて工事中のときから遊んでいた。小・中・高と時を経てこの家から巣立って行くころにはスマホの世界に振り回されず、この場所の世界を信じ、多様性を受け入れる懐の大きい人へと成長して欲しいと願っている。